腕時計は定期的に、オーバーホールしてメンテナンスを行わなければなりません。
オーバーホールをおこたると中の油が劣化して、歯車同士が摩擦を起こし部品にダメージが加わり故障の原因につながります。
故障するとオーバーホール以上に高額な費用がかかるので、定期的にオーバーホールはしてもらった方が良いです。
オーバーホールは、「ロレックス正規店」、もしくは「民間の時計修理業者」に依頼します。
しかし、「ロレックス正規店」や「民間の時計修理業者」でオーバーホールする時に注意しなければならない点があります。
なにも知らない状態で、オーバーホールに出すと時計の価値が下がったり、あとで後悔する可能性があります!
「ロレックス正規店」、「民間の時計修理業者」どちらもそれぞれに、オーバーホールする時の注意点があるので解説していきます。
ロレックスのオーバーホールを検討されていた人の参考になれば幸いです。
ロレックス正規店でオーバーホールする時の注意点
まずは、ロレックス正規店でオーバーホールする時の注意点を解説していきます。
注意するポイント3つあります。
・新品仕上げ(研磨)は頻繁にやらない。
・トリチウムの部品はルミノバの部品に交換される。
・費用が高額になることがある。
1つずつ解説していきます。
新品仕上げ(研磨)は頻繁にやらない
出典: ROLEX
まずは、新品仕上げ(研磨)を頻繁にやらないことです。
「新品仕上げ」とは、時計にできた小さな傷を削り取って綺麗にすることを言います。
「研磨」や「外装仕上げ」、「ポリッシュ」なんて呼ばれていたりもしますね。
ロレックス正規店にオーバーホールを依頼すると、内部のメンテナンスの他に、外装を研磨して細かな傷を取り除き、新品のような見た目に仕上げてくれます。
新品のようになって返ってくるのであれば良いような気もしますが、ここで注意が必要です!
新品仕上げ(研磨)は、あくまでもケースを削って傷を取り除く行為なので、何度も研磨をかけると形状が変わってしまいます。
何度も研磨したケースは丸みを帯びたり、ブレスの王冠マークが薄くなったりします。
また、研磨をしすぎるとケース痩せを起こして防水性や機能性も低下してしまいます。
そのため、一般的に新品仕上げをしても良いのは、5回ぐらいまでと言われています。
使っていれば細かな傷はどうしても付きます。
よほど消したい傷がある時以外、新品仕上げを頻繁にすることはおすすめしません。
ロレックス正規店では受付時に、「研磨なし」でと伝えると研磨せずにオーバーホールを行ってくれます。
トリチウムの部品はルミノバの部品に交換される
次に注意する点は、トリチウムの部品が使われている時計は、ルミノバの部品に交換されてしまいます。
トリチウム?ルミノバ?あまり聞き慣れない単語が出てきたので、それぞれ解説していきます。
トリチウムとは、放射性物質の夜光塗料で、97年以前のロレックスの時計に使用されていました。
放射性物質ですが、僅かな量なので人体に影響はありません。
しかし、半減期があって12年ほどで塗料の夜光は光らなくなります。
塗料も劣化して変色したり、ひび割れを起こしやすくなります。
[トリチウム夜光]
出典: https://www.rasin.co.jp/SHOP/A-1675BLRLE.html
ひび割れした塗料が欠けて、ムーブメント内に入り不具合を起こすなどの可能性もあります。
一方、97年以降のロレックスの時計の夜光塗料にはルミノバが使用されていて、夜光も半永久に発光できるようになり、劣化もしにくい素材になりました。
[ルミノバ夜光]
出典: ロレックス専門店 クォーク
なので、環境面や機能性を考え正規店ではオーバーホールの時に、ほぼ強制的にトリチウムの針や文字盤はルミノバのものに交換されてしまいます。
劣化もしにくく、夜光も半永久に発光できる部品にかわるのであれば良いような気がしますが、ここでも注意が必要です!
トリチウムモデルは、ヴィンテージロレックスとしてファンの間で高値で取引されています。
ヴィンテージロレックスは、なるべく当時のままの状態で残っているほど価値も高まります。
針や文字盤のトリチウム塗料が経年変化で白色からクリーム色→黄色へと変化していきます。
出典: FORZA STYLE
これはこれで、今の時計には出せないアジがあり欲しい人は、大金を叩いてでも手に入れようとします。
そのため、オリジナルのトリチウムの針からルミノバの針に交換されていると、それだけで価値が下がってしまいます。
正規店にオーバーホールを出すと、ほぼ強制的にルミノバの針に交換されます。
トリチウムの針のまま、オーバーホールしてもらうといった融通はききません。
97年以降のロレックスの時計をお持ちの人には関係のないことですが、97年以前のトリチウムモデルをお持ちの人は注意しましょう。
ロレックスは資産としても価値のある時計です。
「価値を下げたくない!」
「トリチウムの針のままでオーバーホールしてもらいたい」
と思う人は、民間の時計修理業者にお願いするしかありません。
僕が持っているロレックスは97年以前のトリチウムモデルだったので、民間の時計修理業者に針や文字盤を交換せずにオーバーホールしてもらいました。
ウォッチカンパニーでロレックスの修理&オーバーホール依頼!修理費用・期間や評判・口コミは?の巻
ちなみに、トリチウムモデルの見分け方は、塗料の色が黄色く変色していく以外に、文字盤の6時位置に”T SWISS-T<25"と表記されています。
(97年以降のルミノバ針は、”SWISS"や”SWISS MADE"と表記されるようになります。)
これは、「放射線量が25マイクロキュリー以下で人体に影響がない放射線量」といった意味で、夜光塗料がトリチウムであることを示しています。
もしくは、トリチウムの半減期は12年ほどなので、真っ暗な場所でも塗料が光らなければ、トリチウムだと判断できます。
費用が高額になることがある
最後の注意点は、費用が高額になることがあります。
正規のオーバーホールの価格は、モデルによって変わりますが、44,000円〜66,000円ほどです。
これはあくまで基本料金であり、そこに部品の劣化が見られれば、交換部品の代金もかかってきます。
ロレックスのメンテナンスは、新品と変わらない状態にして返してくれます。
ありがたい反面、ロレックスの規定は厳しく、使用上部品に問題がなかったとしても劣化しているとみなされれば交換されてしまいます。
そして、交換部品が増えれば費用も高額になっていきます。
例えば、トリチウムの針が使用に問題なかったとしても、劣化とみなされ交換されて部品代が別でかかる、といった具合です。
民間の修理業者であれば、部品が劣化していたとしても使用に問題がなければ、交換せずにオーバーホールしてくれたり、ある程度の融通がききます。
※あくまで、ケースや針などの外部パーツの話であって、内部パーツの劣化や使用に問題をきたす場合は、交換しなければならない可能性もあります。
正規店のオーバーホールは、ロレックスの規定に沿って行われるので、こちらの要望は基本的に受け付けてくれません。
トリチウムの針や研磨をかけすぎて痩せたケースなどは強制的に交換されてしまいます。
そしてロレックスの部品は一つ一つが高いです!
場合によっては、オーバーホール料金が高額になることもあるので、その辺りの想定はしておかなければなりません。
民間の時計修理業者でオーバーホールする時の注意点
続いて、民間の時計修理業者でオーバーホールする時の注意点を解説していきます。
注意するポイントは1つです。
・信頼・実績のある優良時計修理業者を選ぶ。
これに尽きます。
信頼・実績のある優良時計修理業者を選ぶ
民間の時計修理業者の場合、修理・オーバーホールの技術はピンキリです。
技術力のない業者に依頼してしまうと、オーバーホールから返ってきてもすぐに不具合が起こったり部品に傷をつけられてしまう可能性があります。
質の悪いメンテナンスを受けないためにも、信頼・実績のある優良時計修理業者を選ぶようにしましょう。
では、どのような基準で優良時計修理業者を判断すれば良いか?
ポイントは4つです。
・1級時計技能士、C.M.W.、ロレックス修理部門出身者が在籍している。
・純正の部品を使ってオーバーホールしてもらえる。
・研磨の技術が優れている。
・修理保証がある。
順番に解説していきます。
1級時計技能士、C.M.W.、ロレックス修理部門出身者が在籍している
出典: WATCH COMPANY
時計修理業者に1級時計技能士、C.M.W.、ロレックス修理部門出身者などが在籍しているか確認しておきましょう。
「時計修理技能士」は、時計修理に関する知識・技術を認定する国家資格です。
「C.M.W.」は、「日本時計師会」という民間団体が実施する資格です。
「ロレックス修理部門出身者」は、元々ロレックスの修理部門で働いていた技術者です。
いずれかの、技術者が在籍していると、修理やオーバーホールの技術面においての腕前は申し分ないので心強いです。
なかには、技術力が優れていても以上の資格を持っていない時計修理業者も存在しますが、その技量は実際にサービスを受けてみるまで分からないところです。
はじめから、「1級時計技能士」、「C.M.W.」、「ロレックス修理部門出身者」が在籍と公表してくれている業者の方が、一定の目安にもなり安心感があります。
純正の部品を使ってオーバーホールしてもらえる
ロレックス純正の部品を使って修理やオーバーホールをしてもらえるかも確認しておきましょう。
なかには、ジェネリックパーツ(社外品)で修理やオーバーホールを行う業者もあります。
しかし、ジェネリックパーツ(社外品)を使って修理やオーバーホールをしてしまうと、今後一切、正規店のロレックスではサービスを受けられなくなります。
今後、ロレックスでのオーバーホールも考えているのあれば、純正の部品を使って修理やオーバーホールをしてもらえる業者を選ぶようにしましょう。
また、ヴィンテージロレックスをお持ちで、トリチウムのパーツのままオーバーホールしてもらいたい場合は、可能であるかも確認しておきましょう。
とは言え、正規店と違い民間の時計修理業者のほとんどは、そのままオーバーホールしてもらえると思うので、そこまで気にする必要はないかもしれません。
一応念のためにチェックするぐらいに思っておいてください。
研磨の技術が優れている
出典: WATCH COMPANY
もし、オーバーホールの他に新品仕上げも考えている人は、研磨の技術が優れているかも確認しておきましょう。
オーバーホールの技術以外に、研磨の技術も時計修理業者によってピンキリです。
研磨の技術がない時計修理業者に依頼してしまうと、ケースやブレスを余計に削ったり、目が粗くなったりと貧相な仕上がりになることがあります。
左は未研磨の時計、右は質の悪い研磨を受けた時計です。
お分かりいただけるでしょうか?
未研磨の時計はザラつきがなく、滑らかな仕上げに対して、質の悪い研磨を受けた時計は目が粗く、ザラついています。
傷が消えたとしても目が粗ければ台無しです。
このような残念な仕上げにならないためにも、研磨の技術が優れている時計修理業者を選ぶようにしましょう。
修理保証がある
時計のメンテナンス後の修理保証もあるか確認しておいて下さい。
まれに修理やオーバーホールから返ってきた時計に不具合が起こることもあります。
そういった時に、修理保証がありアフターサポートしてもらえると安心です。
修理保証期間は通常、6ヶ月〜1年に設定しているところが多く、短いところで3ヶ月です。
また、アンティークやヴィンテージ時計は耐久性の問題から3ヶ月〜6ヶ月と通常より短めの保証期間に設定されていることもあります。
保証があれば万が一の故障に備えられるので、修理保証のある業者を選ぶようにしましょう。
おすすめの時計修理業者
信頼・実績のある優良時計修理業者を選ぶ基準について解説してきましたが、
「いちいち探すのも面倒!」
「これらの条件を満たした時計修理業者ってどこにあるの?」
と、思われる人もいるかもしれません。
こちらの記事で、信頼・実績のある優良時計修理業者を5社選び、特徴や比較、実際にロレックスの時計をオーバーホールした時の経験談などを載せているので、良ければ参考にしてみてください。
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優良時計修理業者の条件を満たしているだけでなく、
・オーバーホール料金が正規店の約半額。
・納期が正規店と比べて1ヶ月以上早い。(最短で2週間)
・宅配キットあり
・見積もり無料・見積もり後のキャンセル料無料。
など各店舗、サービスも充実しています。
おわりに
以上、ロレックスを「正規店」・「民間の時計修理業者」でオーバーホールする時の注意点について、それぞれ解説してきました。
まとめると、ロレックス 正規店にオーバーホールする時の注意点は3つ。
・新品仕上げ(研磨)は頻繁にやらない。
・トリチウムの部品はルミノバの部品に交換される。
・費用が高額になることがある。
民間の時計修理業者でオーバーホールする時の注意点は1つ。
・信頼・実績のある優良時計修理業者を選ぶ。
ロレックス正規店、民間の時計修理業者どちらを選ぶにせよ、これらのポイントに気をつけて、オーバーホール依頼するようにしましょう。
おしまい